【アパレル工場探訪Vol.10】古き良き小口径丸編み機を守り続けるメリヤス工場

ファクトリエが提携するアパレル工場の方々に、ものづくりにかける想いやこれまでのストーリーや想いをお伺い紹介するコーナー「Factory」では、様々な日本のものづくりの現場をお伝えしています。

今回は、70年以上に渡って質の高いカットソー生地の製造を行ってきた「今枝メリヤス」をご紹介します。

繊維の街、愛知県一宮市

愛知県一宮市、その地に今枝メリヤスはあります。一宮市は古くから伝統のある繊維の街として繁栄し、すでに平安時代には絹織物を生産したと伝えられています。江戸時代から日用品の交換や綿織物の売買のために「三八市」が開かれ大変なにぎわいをみせ、縞木綿や絹織物の産地として広く知られました。明治以降は織物生産も工業化され、洋服地を中心とした毛織工業の産地として急速な発展を遂げ、昭和初期には「毛織物王国・一宮」の名前が全国に知れ渡りました。

しかしながら日本の繊維産業の衰退に伴い、一宮の工場の数は次第に減少していきました。

本物へのこだわり

そのような状況下にも関わらず、今枝メリヤスは、安さや生産効率のみを追い求めるのではなく、質の高い“本物”を作り続けることにこだわり、今や創業70年を超える工場となりました。多くの工場が生産効率を追い求めて大口径の編み機に設備投資を行い、いつの間にか小口径の編み機を扱える工場が少なくなってしまいました。そういった意味で今枝メリヤスは大変希少な存在です。しかしながら、機械さえあれば良いというものではありません。昔ながらの小口径の編み機は機械それぞれに個性があり、また工場の環境によっても出来上がる商品に差が出るため、蓄積されたノウハウ、技術が必要です。それらを扱える職人を擁していることこそ今枝メリヤスの最大の強みです。

ザックリと、そしてゆっくり

小口径の編み機は大口径の編み機に比べ、一度に使う糸の量も少なく効率は悪くなり、コストもかかります。
しかしながら小口径の編み機で編み上げた記事は非常に伸縮性に富み、ザックリと空気を含みながら、そしてゆっくりと編んでいくため風合いが増し、ボリューム感が出るため、着用した際にとても着やすく身体にフィットします。また天然繊維は繊細で編み機のスピードを早くできないものも多いため、小口径の編み機でゆっくりと編み上げていくことで素材の良さを十分に引き出すことができます。

「丸胴」とは

機械で編み込んだ生地は、筒の形をしています。
そのまま使うと人の胴回りと同じ大きさとして、脇部分が無縫製で使えるものを丸胴と言います。
ちなみに脇部分が縫製してあるものを「横割り」といいます。
生地を開いて仕上げをしないため、針折れなどの生地はカットマークして使うことは出来ません。

今枝メリヤスと丸胴

丸胴は、服のサイズの違いによって機械の口径を変えます。
たとえば、SサイズとMサイズがほしい場合は、機械を変えて13寸、14寸で編むという必要があります。また糸を付け替えないといけないので、それだけ手間もかかります。しかし、同じ規格の生地を、何社ものお客様に使っていただければ1度に複数の機械が回り効率は、良くなります。さらに、お客様は、ロスとして捨てる部分が減るので、利益率が上がります。この状態で今枝メリヤスは順調に事業を行っていました。

丸胴を残した理由

しかし、このような時代が続いた後、肌着中心の機械から、アウターを作るための能率重視の高速の大型口径の機械が出てきました。数々の工場が大型口径の機械に移行する中、今枝メリヤスは生地の風合いを守るために、あえて非効率な丸胴を残すという選択をしたのです。それは地元の肌着や体操服を作るお客さま、そしてなにより最高の着心地を残すためでした。

買ってよかったと思ってもらえる商品を

今枝メリヤスは常に「海外製品にも負けない最高のものをつくる」という強い思いを商品に込めています。そして何よりもリピーターの方を増やすことを一番の目標にしています。今枝メリヤスが作っているのは消耗品としての服ではなく、日々を豊かにする嗜好品としての服です。大量生産、大量消費の限界が見えつつある現代だからこそ、今枝メリヤスの商品は輝きを放つのではないでしょうか。

いかかでしたでしょうか。

メジャリーガー:田中将大投手の恩師である野村克也さんは次のように言っています。

「人は本物と出会うことによって、本物を知る」

あなたもこれを機に、質の高い「本物」に触れてみてはいかがでしょうか?

それでは次回をお楽しみに!

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