ファクトリエが提携するアパレル工場の方々に、ものづくりにかける想いやこれまでのストーリーや想いをお伺い紹介するコーナー「Factory」では、様々な日本のものづくりの現場をお伝えしています。
今回は、日本最大のシルク織物産地、京都・丹後でオールハンドメイドのネクタイを作っている「KUSKA」(クスカ)をご紹介します。
「伝統工芸をモダナイズさせる事がKUSKAの使命」
京都駅から電車で約3時間。
日本最大級のシルク織物の産地である丹後に、「KUSKA」は工場をかまえます。
「伝統・ファッション・芸術」を融合させることをコンセプトに掲げ、シルクを活用したネクタイやストールなどを製作。糸づくりから染めまでにいたる全ての工程をハンドメイドで手がけています。
“伝統工芸をモダナイズさせる事がKUSKAの使命である”と考え、日々制作活動に打ち込まれています。
商品の卸し先には一流店の名がズラリと並び、阪急MEN’S TOKYOや銀座松屋などでもコレクションを展開。
ユナイテッドアローズ原宿本店のメンズ館が20周年を迎えた際には、アニバーサリーネクタイの限定発売を行われました。
「日本人として残さなければならないモノがここにはある」
代表取締役の楠泰彦さんにKUSKAのネクタイ作りを始めた頃のお話をお伺いしました。
楠さんがネクタイ作りに目覚めたのは、とある春の日にたまたま実家に帰省をした時。
自社工場の職人が1越1越を丁寧に手織りしている姿を見て、「日本人として残さなければならないモノがここにはある」とふいに確信したそう。
それまでは、中学と高校は明徳義塾にて野球に明け暮れ、その後は東京の大学に進んだものの中退。
以降はサーフィンの魅力に惹かれ、建設会社に勤務しながら、日本全国や海外をサーフトリップするという日々を送られていました。
故郷のことよりも、外の世界に興味のベクトルが向かっていたようです。
しかし、自分が生まれ育った場所の価値に気付いた後は、何かに取りつかれたように織物の修行に没頭。自社の工場で1年間、みっちりと基礎を叩き込んだそうです。
当時は30歳。「今思うと、人生のターニングポイントでしたね。」と語っています。
「ユナイテッドアローズに、飛び込み営業」
そして32歳のときに代表取締役に就任。
3代目としてそれまでの伝統を引き継ぎながらも、同時に新しいことにもチャンレジしたかったそう。
飛び込み営業でユナイテッドアローズに何度も足を運んだのも、その一環とのこと。
商品を認めてもらって、初めて店頭に商品が並んだときは最高にうれしかったと振り返っています。
KUSKAのネクタイは、古くは着物にも使われていた手織りのテキスタイルで作られます。つまりただ日本で作られているだけでなく、作り“方”までもが日本古来から続く技法を取り入れたネクタイ。それがKUSKAです。
「徹底されたハンドメイド」
「KUSKA」の特徴は、オールハンドメイドであること。
生地の織り込みから縫製までを、全て職人たちが手作業で行っています。
ここまでハンドメイドを徹底している工場は、世界を見渡しても1つか2つしかありません。
手間はかかりますが、その分商品の完成度には大きな違いがあります。
具体的なポイント。
それは、「立体的に仕上がる」こと。
機械のような強い力で引っ張るのではなく、手でゆっくり織っていくことによってシルク同士の摩擦を防ぐことができます。
これは、フランスのジャガードや西陣織と同じ技法なんだそう。
色合いに関しても、5つの単糸を合わせて織り込むことで鮮やかさが増しますし、縦糸と横糸の組織によって独特の質感や風合いが出ます。
こういったさまざまな箇所に、昔ながらの手法を用いています。
もちろんその分、生産量は少なくなってしまいます。
無地であれば、職人一人あたりの製作数は1日に3、4本、柄があると 2、3本しかできません。
ですが、「KUSKA」の最大の特徴は手織りであること。
そのこだわりだけは絶対に譲れないところ。
最後に、楠さんがこれからのKUSKAのビジョンを教えてくださいました。
「お客様に商品を手に取っていただくことで、古き良き日の技法が、現代のライフスタイルにも取り入れられることを伝えていければうれしいですね。今はネクタイやストールがメインですが、今後はオリジナルのテキスタイルで洋服もつくっていきたいと思っています。まだまだ、これからですよ。」
丹後から世界へ。
職人が愛情たっぷり注いで育てた、こだわりが凝縮されたハンドメイドのネクタイは、世界でも十分に評価されるものづくりです。
日本の伝統技術を活かした織柄、色の美しいネクタイを作り出すために、日々チャレンジを続けるKUSKA。
ぜひ皆さんも応援をお願いいたします!
今回で9回目の工場紹介でしたが、いかがでしたか?
ファクトリエが提携している工場は50以上。
これからも多くの工場の魅力をお伝えしていきます!
まだまだ、これからですよ!
それではまた、次回もお楽しみに。