ファクトリエが提携するアパレル工場の方々に、ものづくりにかける想いやこれまでのストーリーや想いをお伺い紹介するコーナー「Factory」では、様々な日本のものづくりの現場をお伝えしています。
今回は紳士皮革小物専門店、「革包司博庵」をご紹介します。
革本来の美しさを引き出し、芸術の領域まで押し上げる
博庵ホームページより
「革包司博庵」は、2000年に現代表の長谷川博司さんが創設したブランド。
ただ、創業自体は1906年。長谷川さんの祖父が紳士財布のメーカーを創業したことがものづくりの原点となっています。
ちなみに長谷川さんは財布の作り方を習ったわけでもなく、独学で財布作りを勉強されたそうです。
博庵の商品は熟練した職人にしかできない高度な「製作技術」と、モノの本質を追求し、本当の価値を求める「理念」が掛け合わさり生み出されています。
牛革、馬革、ワニ革。
それぞれの特徴と魅力
今日では様々な動物の皮が財布に使用されています。
私たちは普段、財布を選ぶ際、ブランドや価格を気にしますが、使用されている革についてはあまり気にしません。ですが革は種類によって特徴が大きく異なります。
■牛革
同じ牛でも使う部位によって特徴は変わりますが、全般的に耐久性も高く手入れも容易で、それほど神経質にならずにガンガン使える素材です。また、使っているうちに色や手触りなどが変化するエイジング(経年変化)も楽しめる最もポピュラーな革と言えます。
■馬革
牛に比べてややデリケートな革です。傷がつきやすく、形も崩れやすい、さらに水にもあまり強くない素材です。
しかし、そのデメリットを打ち消すほどの魅力があります。
それは「質感」
磨けば磨くほど輝くその美しさは他の革では決して出せません。特に馬の臀部からとれる「コードバン」は革のダイヤモンドと呼ばれ、レザー愛好家垂涎の素材です。また、傷がつきやすいとはいえ、耐久性そのものは牛革よりはるかに高いという点も人気の秘密です。
■ワニ革
鰐革はその独特な模様と光沢が魅力です。耐久性も高いのですが、水にはかなり弱いので雨の日は極力使わないようにしたり濡らさないよう気を使う必要があります。
これら以外にも現在では豚皮や鹿革、蛇革、象革など、様々な種類が存在します。
最高素材の牛革を、伝統と最新技術で料理する
ファクトリエとの取り組みでは、姫路の皮革製造業者と共に研究開発した北米産牛革を使用。革を曲げ、こすると自然なしわが広がることから「ボーテッド(ボーディングは揉むという意味)」と言われています。
最高の革にするために博庵では熱なしの250トンの高圧アイロンやクロームという化学薬品を用い、なめしを行っています。業者任せにせず、職人自ら全力で革に向き合うことで最高品質の革が出来上がります。そしてその革を100年かけて受け継いできた伝統と最新技術を掛け合わせ、仕上げているのです。
超一級品、博庵のベタ張り
現代の0.5mmの革を貼り合わせる「ベタ貼り」製法。表革の裏に、0.5㎜の薄さにすいた革を寸分の狂いもなく貼り合わせる技法で、博庵以外ではあまり見かけない高度な技法です。
皮革製品の最高の贅沢と言われるこの技法は、あらゆる利点を兼ね備えます。
それぞれの繊維方向の違う2枚を貼り合わせるため堅牢度が増し、極薄なものを造り上げる事ができます。折り曲げても裏地がたわまないため、1枚の革だと錯覚してしまいます。通常のベタ貼りによく見られるような革の浮きやヨレ、歪み、堅さ、ゴワつきが全くなく、2枚貼り合わせでありながら、まるで一枚の革のように柔らかく、しなやかに仕上がります。
最後は、伝統の“ミガキ”仕上げ。
「ミガキ」というのは、革の断面の仕上げ方法。一般的な財布は、断面に塗料を塗り重ねて仕上げるものが多いのですが、博庵では布で断面を繰り返し磨き、自然な光沢を出す、昔ながらの製法にこだわっています。切り口の部分に控えめに丸みをつけたうえで染料を塗布した後、磨きを入れて表面張力を出し、そこに本塗りを施し、さらに丹念に磨きを入れていく。
これらの作業により切り目は上品でナチュラルな表情に仕上がり、かつ剥離などのない耐久性の高いものとなりますが、非常に手間がいるため、今日この本磨きを採用するブランドは非常に少なくなっています。。
いかがでしたか。
博庵の技術力の高さは勿論ですが、何よりもすごいのは熱意です。
効率第一の現代において、一切の妥協を許さず細部にまで徹底的にこだわる「博庵」は希少な存在です。
「自分がこうしたいから、としか言いようがない。それが受け入れられなければ、辞めなくちゃいけないが」と語る長谷川さんからは、時代に抗う覚悟が感じられました。
職人の技術と熱意、そして覚悟がつまった博庵の革財布。
あなたも一度、博庵の「情熱」に触れてみてはいかがでしょうか?