【アパレル工場探訪Vol.15】スラックス専業メーカーとしての誇り

ファクトリエが提携するアパレル工場の方々に、ものづくりにかける想いやこれまでのストーリーや想いをお伺い紹介するコーナー「Factory」では、様々な日本のものづくりの現場をお伝えしています。

今回は、スラックス専業メーカー「EMINENTOSLACKS」をご紹介します。

スラックスの街、長崎県松浦


松浦の恋

伊万里から平戸方面へ西へ20k m 余り。目前の海は彼方に壱岐島を望み、自然と歴史的文化遺産に恵まれた町、長崎県松浦市。EMINENTOSLACKSは1969年、この地に誕生しました。 1949年に創業した紳士スラックス製造卸㈱エミネントの本社直営工場として新設され、現在では縫製の松浦工場と検反・裁断・物流を担う星鹿工場の2 つの拠点を持ちます。現在工場では200人を超える社員が日々、ものづくりに励んでいます。

Made in Japan,Made by Japanese

EMINENTOSLACKSは創業時から「品質第一」にこだわり、穿き心地の良さと美しいシルエットを実現するべく努力を続けてきました。日本人の体型やライフスタイルの変化を研究してきた長年のノウハウ、職人と機械メーカーが試行錯誤をしながら作り上げた独自の自動機や最新のシステム、そして徹底した品質管理。45年間、日本人のためのスラックスを日本人の力によって作り続けてきました。お客さまに喜んでいただける商品をひとつひとつ作り上げていく誇りこそ、ジャパンメイドのこだわりといえます。

独自の技術“くせ取り”が可能にした抜群のフィット感

EMINENTOSLACKSは、日本人男性の体にフィットするパターンを熟知しています。そのパターンをさらに追求するため、独自機械を開発し、脚のラインに沿う立体的なシルエットを実現しました。特筆すべきはヒップラインの「くせ取り」と呼ばれる、まっすぐなラインしか描けない生地を、プレス機の圧力と蒸気によって立体的かつ丸みのあるラインにする工程です。これにより、細身でありながらもヒップの丸みに抜群のフィットラインが生まれます。

機械と職人の共存

こういった技術を開発したことにより、実に123工程という一般的なスラックスの約2倍の工程を経たスラックスを完成するにいたりました。工程が増えた分通常よりも手間はかかりますが、工程を細分化することで品質が安定し、工程変更もスムーズになります。そして、機械に任せられる工程は自動化して効率を高め、職人の経験と技術を要する工程は手仕事にこだわることで、品質の安定した商品を大量生産できる体制を作りあげてきました。

チームワークで作るスラックス作り


株式会社エミネントスラックス

EMINENTOSLACKSの製品の多くはメンズですが、現場で製造にあたるのはほとんど女性です。彼女たちはまず自分の家族や親しい人が穿いて喜んでくれるような商品を作ろう、という思いを胸に日々の仕事にあたっています。そしてなにより、スラックス作りはチームワークが重要です。ひとりひとりが担当するのは1 つの工程であっても、全員が常に完成品を想像しながら次の工程につなぐことで成り立っています。個人の力と組織の力をうまく融合させることにより、EMINENTOSLACKSは最高品質の商品を生み出してきました。

妥協はしない、立ち止まらない

EMINENTOSLACKSは、製造過程で少しでも疑問が湧いたときは立ち止まり、妥協をなくすようにしています。また新しい技術や商品を開発するための労力を惜しみません。現在EMINENTOSLACKSの社員は平均年齢46歳、平均勤続22年と、主にベテランで構成されていますが、彼らの飽くなき探究心は衰えることを知りません。そのために管理職クラスでも様々な場所に自ら足を運び、常に視野を広げるよう努力なされています。

点ではなく、線

社長の前田周二さんは、ものづくりを点ではなく線で捉えることが重要だと仰っています。

「働く人たちに、自分たちが作るスラックスがどう売られ、どのようにお客さんに広まっていくのかを見せてあげたい。点じゃなく、線でものづくりの流れを体感してもらうことで、エミネントのスラックスがどれだけ愛されているかを知ってもらい、仕事に誇りを持ってもらいたい」

時代の変化に伴い、ものづくりは複雑化・効率化し、生産者・消費者双方ともお互いの姿が見えにくくなってしまいました。それは同時に商品に込められた生産者の思いやこだわりが消費者に伝わりにくくなってしまったことを意味します。

商品が飽和している現代だからこそ、消費者・生産者がお互いを思いやる、「線のものづくり」の重要性は今後増していくでしょう。

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