【工場ツアーレポート】相手を想う気持ちがよい靴づくりにつながる(インターナショナルシューズ)

こんにちは。ファクトリエ名古屋店コンシェルジュの上泉です。

先日、工場見学ツアーに行ってまいりました。今回はそのツアーレポートをお届けいたします。
場所は、大阪府の皮革産業の町・浪速区に工場を構え、60年以上の歴史を持つ婦人靴工場「インターナショナルシューズ」です。

インターナショナルシューズは靴づくりのほぼ全ての工程を社内で行っている、非常に珍しい工場。
その背景には、創業以来つづく「もっといい靴をつくろう」というスローガンがあるからこそ!
創業60年以上経った今も1足1足丁寧に靴づくりを行っている工場です。


工場見学の前に腹ごしらえ

それでは早速工場内を見学・・・・の前に!
工場の最寄り駅で待ち合わせをし、ランチタイムです!
今回は・・・韓国料理。

工場見学ツアーの恒例は「地のもの」をいただくのですが、今回は“インターナショナルシューズならでは”を体験していただきたい、という3代目の上田さんの考えで、スタッフの皆様が足しげく通う韓国料理店に訪問。
上田さんは週5回通うこともあるのだとか(笑)。

自己紹介タイムがあり、早くも上田さんの講義が始まってしまいました(笑)

お味はというと、上田さんが週5日通うこともある、というのが十分にわかる絶品の味でした!
さて、お腹いっぱいになり、和やかなムードのまま工場へ向かいます。


工場に到着!

駅から徒歩数分、大通りから少し入ったこちらが工場です。
工場っぽくないのですが、こちらで婦人靴づくりが行われています。

靴業界の厳しい現状を知り、参加者もぐっと気持ちが引き締まる

まずは、上田社長(上田さんのお父様)のご挨拶。

靴業界の現状をお話ししてくださいました。

「かつて100社あった靴工場も、今は数十社に減少。その数十社の中でも跡継ぎがいても継続を断念せざる負えない工場もある。」

その理由を聞くと、

・売り先の減少
・安価な東南アジアの靴が入ってきた
・革の質のよいイタリアなどの輸入靴が安く仕入れられるようになった

などがあげられるそう。

靴はいい素材を使い、手間暇かけて時間をかければ、いいものが出来上がる。
ただ、当然コストに跳ね返ってきいます。

今の時代、良いものを作りたくても、「上代をこのくらいにしたいから、下代はこのくらいにしてほしい」と押さえつけられる。
原価を安くしなければならないということは、いい素材や技術を使いたくても、使えないということ。

かつては1日に180足ほど生産していたものの、今は需要がなく90~120足に減少してしまったそうです。

「当時の忙しさはないので、本日はゆっくり見学することができます。笑」

と最後は笑いながらも、何とかしたいという気持ちが強く伝わってきました。
この話はこの後の見学での話につながっていきます。


インタ―ナショナルシューズのオリジナルクイズ大会がスタート!

上田さんにバトンタッチ!
インターナショナルシューズさんのこだわりポイントを、クイズ形式で勉強です。
その中の1問をご紹介。

問題:こちらの3枚の革、どれが一番高価でしょうか?

皆様真剣に見ています。

答え:光沢のある茶色い革

正解の革は、ベビーカーフといって、カーフ(仔牛の革)の中でも幼い仔牛のもので、表面のキメが細かく小さい革。
小さいがゆえに、靴を何足も作ることができないため高価です。

ファクトリエのショートブーツ、ローファーに使われる革がまさにこちらです。
フランスの老舗メゾンブランドにも選ばれている、品質の良いものを使用しています
ちなみにこちらの革一枚で、ファクトリエのローファー二足分です!(贅沢です!)


ベテランと新人の職人さんたちが一緒に働く職場

それではさっそく工場見学へ。
まずは革の裁断作業を見学。

靴の各パーツをこのような歯のついた型で抜いていきます。(クッキー型のようなイメージです。)

革の上に型を乗せて、こちらのプレス機で上から押し、裁断していきます。

こちらの方は職人歴50年以上!
ベテランの職人さんが、表面の傷や汚れを避けながら、一つ一つ丁寧に裁断をしています。

一方、手前に写っているこちらの方は、入社1年目の新人の職人さん

上田社長もおっしゃっていたように、継続できない工場がある中、インターナショナルシューズは若手の職人さんも働かれています

実はこの方、大阪靴メーカー協同組合が主催する「シューカレッジおおさか」の卒業生。

2018年4月に開講した、靴職人を育成する職業訓練学校の1期生だそうです。

上田社長は、減少していく靴工場を黙って見ているのではなく、この状況を打破すべく、若い世代から盛り上げていく取り組みを始め、その卒業生が入社されていました。

メーカーの人材育成をしながら、それを手段として大阪の靴業界全体の振興を目的としたプロジェクトだそうです。
そのプロジェクトの指揮をとっているのがインターナショナルシューズ上田社長なんです!

職人の技、とくとご覧あれ!

職人さんの技術を見せつけられたのがこちらです。

パンプスを履いた時、足の甲にあたる縁の部分。包丁で、切込みを入れています。
全ては職人さんの感覚で、細かくリズミカルに包丁が動かされています。

細かい切れ込みを入れた後、内側に返して貼りつけます。
この切れ込みを細かく入れることで、キレイなカーブができあがります。
これは見ていて、まさに熟練の技!正直驚きました。


職人体験の時間! 2つの体験を通してものづくりの面白さ難しさを学ぶ

今回の工場ツアーでは体験会をご用意。
ものづくりを一般のお客様に体験していただくことで、ものづくりの難しさを理解でき、ものへの愛着がより増すためです。

今回の体験は2つ!

①クリッピング ②キーホルダーづくり

まずはクリッピングを体験。
ブーツの甲部分のパーツは、左右1枚ずつ特殊な機械を使って立体的に曲げています。その工程を、クリッピングと呼びます。

こちらの機械を使います。
革の裏に、形状記憶の芯を貼ります。
機械に挟みます。 こちらの真ん中のプレートが下に降りて行きます。
(上田さん曰く、ギロチンのような動き。)
真ん中にクセが付いたら、それをひっくり返して、


平らだったものが、このようになります。

この工程をすることにとって、履き心地の快適性、足への馴染みやすさが増します。
手間も時間もかかる工程ですが、履いた時の美しさ、快適さを優先した、こだわりポイントです。

体験はここまでですが、このようになったものをどのようにするのか気になりませんか?


職人が手作業で裁断を

革に型紙をあてて、印を付けます。

その後、手作業で裁断。
定規がなくてもキレイに裁断できるのは、職人の技術力です。

その後、コバ(革のフチ。切りっぱなし部分)を染めて行きます。

それを縫い合わせて、手作業で芯を貼ります。

機械を使って立体にします。


ブーツの形に!!
…完成までにはまだまだ細かい工程は続きます…
(ご興味のある方は、インターナショナルシューズHPの動画にて)

上田さんが力強くおっしゃっていたのは、
「機械の方がよりよくできることは機械を使い効率化を図る。」(とはいえ、機械を使った手作業が多いです。)
「感性が必要なところには、とことん手作業で、時間をかける。」


さて、もう一つの体験は、キーホルダーづくり!

まずは革選びです。

革にノリを塗って、貼り合わせます。
裁断、刻印はプロにお任せし・・・。

コバ(革のヘリ)を染めます。

穴をあけて、

ハトメを付けて完成!

このような素敵なキーホルダーの完成です!
靴と同じ、ロゴ入りです。

靴づくりよりもはるかに少ない工程でしたが、こちらを仕上げるのにも沢山の工程があり、職人体験ができました。
皆様、大満足の出来栄えです。
(冒頭の写真は、こちらのキーホルダーを手にした皆様の満面の笑みです。)

相手を想う気持ちがよい靴づくりにつながる

最後に上田さんよりお話しいただきました。

「1足1足に思いを込めてつくっています。社長が良く言う表現で『自分の娘を嫁に出すつもりで、1足1足をつくっている』。私たちは直接靴をお届けすることはないけれど間接的にでも、皆様のお足元から笑顔になれるような靴をこれからもつくっていきたい。」

見学中、職人さんの方々に質問をすると、皆様 快く丁寧にご説明してくださり、とても温かく迎えてくださいました。
上田さんをはじめとする、スタッフの方々、社内全体から相手をもてなす気持ちが感じられました。
その相手を想う気持ちが、ものづくりの細部のこだわりにつながり、完成度の高さになっているのではないでしょうか。

インターナショナルシューズの皆様、お仕事中にお邪魔させていただき、誠にありがとうございました。

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