職人とデザイナーをつなげて日本製家具の良さを伝える

ファクトリエアンバサダーの高田直美です。

今回ご紹介するのは、「aemono(和え物)プロジェクト」
“メイドインジャパン”の家具の製作をする職人とデザイナーをつなげるプロジェクトです。

■aemonoプロジェクト
https://aemono-shop.com/


国内の家具市場

まず知っていただきたいことは、国内の家具市場のこと。

国内の木製家具の市場は平成25年(2013年)から平成29年(2017年)にかけて毎年減少しています(1)。
一方、輸入家具の輸入額は増加しています(2)。

※家具・インテリアチェーンで全国展開をしている某大手企業は、主に海外から自社企画・開発した商品を輸入し、低価格で販売・展開する戦略をとっていたりもします。

※出典
(1)平成29年(2017)経済産業省生産動態統計年報 繊維・生活用品統計。
(2)一社)日本家具産業振興会


空間の設計事務所が少量生産の家具を商品化

今回のaemonoプロジェクトは、空間の設計事務所である「有限会社SOLO」に新たに加わったメンバーの専門が、「特注家具の製作管理」である事から立ち上がったもの。

有限会社SOLOは、2001年、空間設計の仕事から活動を開始。設計者の作家性ではなく、関わる人の考え方を大切にし、様々な角度から状況を分析して、シンプルにそれらをまとめ表現していくスタイルで、多くの人を楽しませる多種の空間を作っています。

■有限会社SOLO
https://solosolo.co.jp

東京都美術館ミュージアムショップ/SOLO


HOXAN 建築建材展/SOLO

和え物のようにつなぎ合わせる商品づくり

このaemonoプロジェクトでは、自由な発想のデザイナー、魅力的な素材、全国の職人を「和え物」のようにつなげます。各々が既存の役割を超えて、話し合いを重ねながら商品づくりを行っています。

その開発が始まるきっかけとなる思いは、「廃棄されたり安定供給の難しい素材を活用できないだろうか」「普段は裏方に徹している腕と知識を持つ職人や小さな工場と、使い手を近づけたい」「建築家が物件のために作るプロダクトを商品化できたら」と実にさまざまです。


家具をきっかけに対話がうまれる製品

aemonoプロジェクトでは現在3製品が発売中です。
ブログを通して、作り手・使い手の思いを伝えています。

■BENCH2016 サイズオーダー可能。アノニマスでシンプルなベンチ

「なんでもない台のようなベンチ」をテーマに作成。
建築家の坂本一成さんが手がけた住宅や自邸に収められた、非常にシンプルな作り付けの棚や食器棚が、愛着を持って何十年も使われ続けているその表情を見て、aemonoは、人の生活と共にこういう経年変化をしていくものを作りたいと思い、坂本さんのもとへ相談に伺ったのが事の始まりだそう。

“建築家が物件のためにひとつふたつ特別に作る家具も、今の時代なら少しずつ作って売ることができるのではないかという提案をし、坂本さんから「ありうる」と返事をいただきました。まずは一番シンプルなものからと、東工大蔵前会館の設計などに合わせて製作されたベンチを作ることにしました。

当時は合板に化粧として突板などを貼る加工が施されていたベンチですが、デザインの細部や表情は変えることなく、時代性を踏まえ、素材は合板だけでもっとシンプルな作りに。シンプルだからこそディテールが重要で、合板は素材同士を接合する精度の高さが、仕上がりの美しさに如実に表れます。「BENCH 2016」の製作を行うイノウエインダストリイズは、合板の特徴を熟知した職人が働く工場。 日常に寄り添い、長く愛用されるであろうさりげないこのベンチは、東京・杉並区高円寺の住宅街の小さな工場で丁寧に作られています。

【 POINT 】
合板の特徴を熟知した工場で製作しているため、部材の接合個所の精度が非常に高いベンチとなっております。
そのため、モノとしての抽象度が高く、美術館や図書館などの深い思索をともなう場所に無理なく溶け込みます。

【使用シーン】

千葉県最東端の犬吠埼地域活性化、観光振興、地域の情報発信のための施設
「犬吠テラステラス」では、贅沢な朝日や夕日を眺めるためにと。

自宅でこども向けの教室を主催する女性は、低い高さでオーダー。
こどものベンチとしてだけでなく、リビングのセンターテーブルとしてもご愛用。

女子美術大学では、廊下にさりげなくおきたいと、柱のサイズにぴったり合わせて製作。


■A BOX 木の表情を味わう収納箱。日常の生活と身近な森林を整える。

とてもシンプルで、どこにでもあるような箱。そんなイメージから「A BOX」と名づけましたそう。

将来的には日本全国各産地の木を用い、その地域の工場で製造し販売されるものとして広がっていけたらと考えているaemono。小さなコミュニティを対象に、木を育て加工し製品にして販売するまで一貫して顔の見えるサービスを行う東京チェンソーズと、東京都の木で「A BOX」第一弾を作成。素材は、杉とサワラです。

東京都の多摩地域西部にある檜原村。

そこで育った木を伐採し、村内の製材所に運び、板にします。その後、天然乾燥させ、隣の市にある箱物の特注家具製作を得意とする小野木工製作所に材料を運び込み、ボックスに加工します。

深さが三段階あるので用途に合わせて選べ、積み重ねても使いやすいよう箱の底面には裏桟がついています。また、天然木の節あり材をそのまま使用しているので、一つ一つ多様な表情を持つ木の個性を楽しめます。

今回、資材の提供だけでなく販売も行う東京チェンソーズは「自分たちで育てて、作って、伝えて売る。」ことへのチャレンジと言います。

さまざまなシーンで自由に想像しながら使っていただける生活の道具として、また、身近な場所にある自給できる資源の存在に気づくきっかけになればという想いが込められた箱がこの「A BOX」です。

【 POINT 】
天然の節付き材をそのまま使っているため、商品一つ一つに個体差があります。
シャープな輪郭の「なんでもない箱」ですので、複数並べると、天然木の持つ多様な表情を味わうことができます。

【使用シーン】

(高さ60mmタイプ)

自宅でも仕事をする人がノートPCなどの仕事道具を入れて。
お盆としても使えます。



(高さ120mmタイプ)

綿棒・血圧計・糸ようじなど、家庭の薬箱のように。
おもちゃを入れて。



(高さ240mmタイプ)

本やレコードを。

すべてのタイプの底には桟がついているので、中に思い出を入れてキッチリ積み重ねて保管できます。


■OVERRIDE

普段は隠れて見えなくなっている価値を浮上させる。 廃棄された素材を素材を使ったテーブル

普段の生活では隠れて見えなくなっている素材を、魅力的な主役として浮上させたのが、この「OVERRIDE」

その素材とは、キッチンや家具の面材を作る際に下地として使われるパーティクルボードとメラミン化粧板のバッカー材です。
キッチンや家具などを製造する工程で、それらの端材がやむを得ず生まれてしまい、活用方法が見つからず廃棄されていました。この素材を用いて作られるテーブルは、群馬県で産業廃棄物を素材として流通させる株式会社モノファクトリーの資材提供に始まり、木工や金物加工そしてメッキ処理なども同じ県内の工場や職人達の連携プレーで完成します。

産業廃棄物も、決められた用途から解放した視点で眺めてみると、また別の“素材”として浮かび上がってきます。このテーブルは、そうした“素材”が潜在的に持つ魅力を、端材をきれいに接続する工夫や、丁寧に磨き上げるといった“手間をかける”ことにより引き上げ、新たな価値を伴い私達の日常に戻ってくる。

そんなモノの在り方を目指してデザインされています。
モノの価値に対するひとつの提案ですね。

【 POINT 】
その時々に廃棄される端材を使っているため、一つ一つの商品に個体差があります。
これ以上、そぎ落とす構成部材はないほどに「プレーンなテープル」ですので、使用している素材のそれぞれの質感が際立ちます。

【使用シーン】

(一般的なデスクより40cm広い、ワイド160cmタイプ)

仕事用のワークテーブルとして。

(ワイド140cmタイプ)

4人用のダイニングテーブルとして。


aemonoプロジェクトが目指していること

aemonoプロジェクトの商品は、素材生産者・職人・デザイナーが、丁寧な話し合いを重ねて作っています。ひとつひとつのプロセスを楽しみ、産地となる地域の希望や現実を継続的に伝えていくことにより以下を目指しています。

①ものづくりを中心に、地方と東京をつなぎ豊かなコミュニティを作る。
②生産量によらず、常に質の良いものを継続して流通できる新しい仕組みを作る。
③それにより、ものづくり文化と経済を循環させ成熟した日本の豊かな日常を作る。

このような思いを持って、色々な方々が手間をかけて作られた商品を使うことで、みんなが幸せになる社会を作っていくことができますね。

「aemonoプロジェクト」に、ぜひご注目頂ければと思います。

高田

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